「だから、俺だって全然大人なんかじゃないよ。頭ん中、いっつも美喜のことしかない」
「――…………」
ぎゅっ、と、翼の腕に力がこもる。
……付き合ってあと4ヶ月で、2年だというのに。
ふたりとも、恥ずかしくなるくらい初々しくて。
お互いの気持ちに鈍感で、勝手に突っ走っちゃうのは、まさに文字通りお互いさま。
つい口元が綻んだのは、割りと本気で、翼も私もまだまだ子供なんだなって認識したから。
でも、そのことが妙に嬉しいのだ。
「じゃあ……私と同じじゃん」
「……え?」
くるっと身を反転して、翼と向き合う。
……あ。前会ったときより、背伸びたかも。
なんて、小さな変化に気づけるこの距離が、好き。
「……私も、普段会えないのさみしいし、翼モテるからお客さんにまで嫉妬しちゃうし、今日だって、何回もデート無しになったの恨んだし」
それに……と、一呼吸置いてから、翼を真っ直ぐ見つめる。
「……私だって、いっつも頭ん中翼ばっかで困ってるもん。ばか」
言ったあとに、あれ、私なんかケンカ腰?と思った。


