「失礼いたします。ご注文の『スマイルパンケーキ』です」
深々と頭を下げる翼の横から割り込み、にーっこり笑うと、女ふたり組のテーブルへひとつのデザートを置く。
可愛らしいスマイルくんの形をしたパンケーキの上に、ストロベリーソースがかかったお店でも人気の一品、スマイルパンケーキ。
そんなにスマイル欲しいってんなら、これ食ってろよ☆
「は?なにこれ。注文してないんだけど」
案の定、女ふたり組は目尻を上げて私を睨んでくる。
翼の前と私の前じゃ、とことん態度が変わるよう。
女って恐いわ。
けれど本の一ミリも動揺しない私は、彼女らが欲しがっていた“とびきりのスマイル”を浮かべてこう言った。
「あら、そうでしたか?先程から、なんだかスマイルだの笑顔だの他のお客様にご迷惑なほどに聞こえたので、てっきりこちらの品をご注文なのかと思ってしまいました。私の勘違いだったようで、申し訳ございません。ですが、折角ですのでそちらお召し上がりください。うちの自慢の一品です。もしお気に召されないようでしたら、彼の代わりに私が最高の笑顔を差し上げますがいかがでしょう?」
「…………」
シーン、と静まるこの空間。
体勢を戻した翼は、ぽかんと口を半開きにしたまま、隣で満面の笑みを浮かべる私を見つめる。
女ふたり組は、鳩が豆鉄砲でもくらったように目を真ん丸くさせて、やがて悔しそうに私から視線を外した。
……あ、しまった。完全にケンカ売っちゃった。
ま、いっか。


