あのあとお兄さんに散々からかわれながら朝食を食べ、マリアちゃんと少し遊び、今は帰り道。
離れがたいけれど山田くんのご家族とお別れをし、山田くんにあたしの家まで送ってもらっている。
なんだかんだ言って、もう午前8時半過ぎ。
隣を歩く山田くんをチラリと見上げ……不思議な気分に包まれる。
実を言うと、昨日の記憶が全くないって訳じゃないんだ。
ただ、虚ろすぎて、現実だったのか夢だったのか、自分ではわからなくて。
ぼんやりとする視界と頭と思考。けれどそんななかでも、山田くんの声だけが鮮明に聞こえてきて。
“好きだよ”
って言って、体の芯が溶けてしまいそうなくらい甘いキスをしてくれた。
あれが夢だったなら、あたし、相当欲求不満なのかな……?
昨日の出来事で覚えているのは、それだけで。
あとは、ただずっとふわふわ体が浮いていた。そんな感じ。
スゴく幸せだったなぁ……。
人もまばらな朝の街中を、ゆっくりふたりで歩く。
結局朝帰りしてしまった……絶対お母さんに茶化されるんだろうなぁと若干萎えていたら、山田くんがふとつぶやく。
「……あのさ」
「うん?」
「……不安とか、ならなくていいからね」
「……えっ……?」
「……ちゃんと、好きだから。柚希のこと」


