「あっ、の……」
寝起きなはずなのに、突き抜けるような瞳があたしを捕らえる。
近い距離と後頭部に回された腕が恥ずかしくて、途端に紅潮した頬と山田くんの視線から逃げるようにうつむく。
べ、別に、やましい思いがあった訳じゃなくて。
いや、そ、そりゃ、山田くんの顔を見てたらキスしたいな……とかがっつり思っちゃってたけど。
で、でもまだ未遂ですよ兄貴ぃ……っ!
怒らせたかな!?と内心めちゃくちゃ焦っているあたしは、冷や汗が止まらない。
息をすることさえ憚(ハバカ)れるような静寂のなか、山田くんに見つめられてショート寸前のあたしは、山田くんの次の一言で心臓を撃ち抜かれることになる。
「……おはよ」
「……っ!?」
――ギューーーーーーーーーーーーーーンッ。
キューンの進化系、ギューンしてしまった。
だって、あの山田くんが!
普段クールで無愛想で滅多に笑わない山田くんが!
起こされるのが大キライな山田くんが!
今っ、目の前で、あたしを見つめて微笑んだんだよ!?
目を細めて、ふわりと柔く微笑んで。
まるで、花が綻んだように。
呼吸が停止して、時が一瞬止まったような感覚に陥った。
それはそれは優しくて甘い微笑みに、もちろんあたしが耐えられるはずもなく。
「……お、はよう」
「……ん」
真っ赤な顔でなんとか単語を口にしたあたしのおでこに、満足そうに微笑んだ山田くんがひとつキスを落とした。
ビックリして硬直するあたしに、山田くんが『……柚希の髪くすぐったい』なんて急に幼く笑うから、あたしのハートは体を飛び出して宇宙に飛んでった。


