「ごめんね。あたし、久遠くんのこと何も知らないし…だから…っ」

「知らないなんて嘘でしょ」



あたしの言葉を遮るように、久遠くんはあたしを壁に押し付けた。



なんで!

何でコイツはあたしの前だとキャラが変わるの?!



びっくりするより先に、そんなことを考えてしまった。



前髪が邪魔で、久遠くんの表情が見えない。



「……」

「……」



なに、この沈黙は。



「本当に…俺のこと知らない?」



久遠くんは前髪を整えて、片方の髪の毛を耳に掛けた。