家で少しだけ時間を潰して、お母さんに「買いにいかなきゃいけない本を買うの忘れてた」

とかいう理由をつけて、家を飛び出した。



手にはケータイと家のカギだけ。



一応、湊くんに会うのに恥ずかしくないような

でも、オシャレすぎないような服を着てきた。



改札の前まで来て、キョロキョロ辺りを見回す。


「まだいない、か」



でも、やっぱり夜の道は少し怖くて、全力で走って駅まで来た。


息が元に戻るまで、数秒かかった。



「蘭ちゃん。ごめん、走って来てくれた?」


後ろを振り向くと、マスクをした制服姿の湊くんだった。



あ、マスクしてたからよく顔が見えなかったのか…。



湊くんの顔が見えて、ホッとした。