オーディションの日だね。



「蘭…。俺に勇気ちょうだい」



勇気、か。



湊くんは何回も何回もオーディションを受けてきてるはずなのに。

あたしと付き合っている間も、何度もオーディションを受けているはずなのに。



わざわざあたしにこんなこと言うなんて、本当にこの役は大きな役なんだ。



「ちょっと待ってて」



部屋の中に戻って小さなメモに言葉を書いた。

はちみつ飴にそのメモを貼り付ける。



「湊くん、ちゃんとキャッチしてよ?」



あたしがそう言うと、湊くんは『はははっ』と笑った。