「今、蘭の家の前にいるんだけど、ちょっといい?」

「えっ?!」



本日二回目の驚愕。



付き合ってから午後に仕事がない日は、

湊くんは家まで送ってくれるようになったから、あたしの家は知ってる。



「まって!すぐ行くね!」



ケータイをほっぺと肩でおさえながら、コートに手を掛ける。



「あ、来なくていい。窓開けて」

「え?窓…?」



コートに通そうとしていた腕を窓に伸ばす。


窓を開けると、下には

紺色のダッフルコートに白いニットのマフラーを巻いた湊くんが立っていた。



「…今蘭に触れる距離に来られると、俺耐えきれないから」



静かにそう言った湊くんの吐く息が白い。


「寒いのにごめんな」

「ううんっ…それより明日…」