だから、少しあたしたちは油断してたんだ。
次の日教室に入ろうとしたとき、不意に誰かとぶつかりそうになった。
「…っ、ごめんなさいっ」
顔を上げると、絵麻ちゃんだった。
着崩された制服、濃い化粧。
鼻にツンとくる香水の匂い。
「邪魔なんだけど」
「…ごめん」
「謝るくらいなら最初からさっさとどけっつの」
「……」
去り際にチッと舌打ちされて、絵麻ちゃんのグループの人にジロジロ睨まれる。
だから目を合わせないように、ずっと下を見てた。
目を合わせたら、きっとまた何か言われる。
悔しいけど、言い返したいけど。
言い返したらだめになる。


