小さいのに、僕にはもう弱さは見せまいと凛とした姿勢を貫くその姿は誰よりもきっと強くて、脆くて、危うくて、…そして愛しかった。


ねえ、さとみ。謝るなって、言ったじゃないか。そのくせ自分は謝って終わり、なんてずるいよ。


視界が歪んで、彼女の背中がぼやける。それでもぐっと服の袖で涙を拭い、彼女の背中を追い続けた。

最後の見納め。


空は、もう完全に黒が他の色を呑みこんでいた。それに比例するように、彼女の背中は遠ざかって行った。
見えなくなるまでその場に突っ立って、僕は彼女を見送った。



「…さとみ、ありがとう。愛してたよ。バイバイ」



完全に見えなくってから呟いて、僕もクルリと背を向けた。なるべく速足で歩き出す。