燃えるような赤はその鮮やかさを残しつつも静かに去っていき、どこか透明感を感じさせる黒と馴染む。
その中で溶け込みつつもさりげなく存在を主張する擦ったようにぼやける雲と、ほんの少しだけ見える紫。


空はそんな、切なさを掻きたてるような色をしていた。


…何て似合いのシチュエーション。乾いた笑いすら漏れる。
別れを告げるのに、ここまで似合いのシチュエーションがあるものだろうか。



彼女は何も言わずに、ただただ無言のまま僕の隣を歩いていて。
僕も何も言わず、彼女の歩調に合わせて歩いた。


綺麗とは言い難い川に空が映る。果てがないように見えた。

世界の終りがそこまでそっと近付いているような、そんな錯覚すら覚える。でもそれはあくまで『錯覚』で。


きっと僕の今のこの感情が、そんな錯覚を引き起こしているのだろう。


――彼女は何を思っているのだろうか。


夕焼けの赤に照らされた彼女の表情は無で、そこからは何の感情も読みとることが出来ない。
きっと察してはいるのだろう、この終わりを。


それを嫌だと思っているのか、仕方ないと諦めているのか、はたまた別の感情があるのか、それすらもう僕には判らなくて。

こんなはずじゃなかった。最初のうちはこんなことはなかったのに。