「ピチチチチ…」




小鳥のさえづりで、目を覚ました。




爽やかな朝の目覚めの演出か?

それとも、私への当てつけか?



黄色く変色した障子越しに朝日が幾筋も室内へと流れ込む。



そんな、絵に描いたような爽やかな目覚めの演出とは裏腹に…




……私の気分は最悪だった。





むしろ、腹立たしささえ感じる。




差し込む朝日と、今いる場所を思うと


あれから一回り時は流れたらしい。




ここは、おばあちゃんの家。



私はキチンと敷かれた布団に寝かされていて

ここに銀狼の姿は無い。




どうやって帰って来たかなんて覚えていない。


私はあれから眠っていたようだ……



けれど……



少しも眠っていたような気がしない。



それ所か…


私にとって、今だ、あの時の続きを漂っているように感じる…



昨夜の銀狼を想い返す……








…ムカつく……。


その一言につきる。


あの表情一つ一つが妙に腹立たしい…。



私には見せた事のない顔…。

私には見せた事のない瞳…。




「~~~~~~~っ!!!」




「うがぁぁぁ~~~~~っ!!」



堪らず雄叫びをあげる。




ってか、私には関係ないしっ!!

ってか、私なんて巻き込まれていい迷惑だしっ!!

ってか、あたしは銀狼に同情してただけだしっ!?

ってか、てか、なんなのよっ!一体っ!?

もぉぉぅーーーーーーっ!!


思いのたけ、枕をサンドバック変わりに

ボスボスと殴る。



自分の今の気持ちを何に例えていいのか解らないのだ…。

とにかく…


なんか…

虫の居所が悪いのだ。




鏡台の写真立てをキッと睨む。


寄り添う二人の姿がこれまた腹立たしい。


「…………」



しばらく横目で睨んで…


大きく深呼吸をする…。



その効果があってか…

ささくれた気持ちが少し落ち着いた。





あの光の玉は……おばあちゃんなんでしょ?

一体、どうしたいの?

銀狼は……苦しんでるよ……

おばあちゃん……



写真の中で微笑むおばあちゃんは何も答えない…。


自分の色んな感情に疲れて

思わずため息が漏れる。


「……ふぅ……。

 何か……、面倒臭いなぁ…、もぅ…」




そう呟いた時…



「おはようございまぁーす!」


何やら玄関先が騒々しい。