「犬神がついに目覚めたか」


男は不気味な薄笑いを浮かべた。


「はい、先程、使い魔がそれを確認したようです」


その男の部下らしき男は膝まづいて答える。



真央の祖母の家から伸びる一歩道を、徒歩で二時間程下ると、小さな集落へ辿り着く。

ここは、その集落にある山神の社にある一室だ。

犬神の社とは違い、立派な社殿を構えており、何より人の出入りがある。



部下の男が付け加えた。


「犬神は人柱と接触したようです」


男はそれを受けて声を荒げた。


「何っ!?人柱がっ!?………そうか、犬神の奴め…」


彼は少しの間思案をしていたが、やがて部下に告げた。


「我が主もそろそろ目覚めの時だっ!!

 目覚めたての腹を空かせた主に、人柱を捧げてやろうぞ!

 皆を集めよっ!!」


部下の男は、片膝を床に付けたまま、


「はっ!!」


と、一礼すると、命令を遂行すべく素早く退室していった。



部屋に残された男は、なおも思案を続ける。


「犬神め……!もう同じ事は繰り返させんぞっ…!!」



そう言って唇を強く噛んだ。