店を出てすぐ、腕を八神諒に掴まれた。


不意討ちで、私の唇に柔らかいものが触れた。

それは私の口唇を開き、中にぬめりと侵入してくる。

自分が何をされているのかに気がつくと、私はその唇を思いきり噛んだ。


「……ってぇ。掛井はよっぽど上手くお前を調教してるみてぇだな」


唇から血を滴らせた八神諒を睨み付ける。


「……調教とかされてないし。アンタと違って、樹はいつでも私の事を尊重してくれる」



「……尊重…か。なら掛井に伝言。『№2を抱えた組織は、脆い。大将が二番目を優遇すれば組織は瓦解する』………そう伝えておけよ」


今までに見たことも無いような凄味のある目で私を見た後、八神諒が声を出して笑った。