風になりたかった。 二階に上がると、メットと携帯、財布を無造作に突っ込んで音をたてないように家を抜け出した。 どうせ私が出ていったところで、あの人達が慌てる事はないだろう。 勢いよく単車を噴かすと、いく宛もなく道を走り抜けた。 どこを走ってきたのかは分からない。 ただひたすら真っ直ぐに走ってきたから、それを逆に走れば戻れるのだ、どうせ。 知らない場所で迷子になった私は、その事自体がまるで自分の生き様のように思えて失笑した。 私は、どこに行きたいのだろう?