とある男子校にて

ちょっとおバカな男子高生達が
なにやら
教室の片隅で話しをしております。

「暇だなぁ。おい、タケル
何かおもしれぇ話ねぇの?」

と、リーダー格のケント

「おもしれぇ話ってか?
ケントがすりゃいいじゃん。」

「なんもねぇから聞いてんだろ?
コウタは?なんかねぇの?」

ちょっとのんびり屋で
人よりワンテンポ、ずれるコウタ

「んーーーっと
ーーーーない。」

「引っ張った割にはないのかよっ。
じゃあ、リョウイチは?
お前、こういうの得意じゃん。」

「そうだなぁ……
怖い話とかってどう?」

「ああ、ダメダメ、
俺さ、それ系の話苦手なんだよ。
子供ん時からダメでさぁ。
マジで他の話にしてくれよ。」

「ケント、怖い話苦手なんだ。
へぇ~、意外だよな。
そんな風に見えねぇよ。
聞いてみないとわかんねぇな。」

「おっ、そうだ!」

「なんだよ、ケント。
大きな声だして。」

「わりぃ、いや、お前らもさ
怖いものとかなんかあるだろ?
順に言ってけよ。」

「「「怖いもの?」」」

「そっ、なんか一個くらいあるだろ?
カミングアウトしようぜ。
俺は今、言った通り、怖い話がダメ。
はい、タケルは?」

「お、おれ?」

「この世の中で何が怖いんだよ?」

「この世の中で……って
そりゃぁ」

「「「そりゃぁ?」」」

「母ちゃん。怒ると、ギャオスみたいだろ?」

「「「ぁあ~~、ギャオスな。納得。」」」

「な、な、なんか納得されても複雑なんだけと……」

「コウタは?」

「俺?言いたくないなぁ。」

「何だよ。勿体ぶんなよ。」

「違うって。まじで口にするのもやなんだよ。」

「へぇ、尚更、気になるじゃん。
ほれ、言ってみなよ。」

のんびり屋のコウタをケントが急かします。

「ん、じゃ、言うぞ。
ム、ム、ムゥ~~~~~~~~やっぱ無理ぃ」

「お前は女か。」

「うっさいなぁ。言えばいいんだろ。
言うからね。
聞いてろよ。一回しか言わないから。」

「早く、言えって」

「急かすなよ。ほんっとケントは
気が短い。俺、気が短い人もダメなんだよなぁ。なんかさ、コンビニとかでみかけるんだけど、店員がさ、一生懸命やってんのに、『急いで』とかって言う人いるじゃん?あれさ、逆効果だよ。言われた店員、焦っちゃってビニール袋つるんつるんして開かないのなんのって……っで、何の話だっけ?」

「怖い話だろっ!」

「そっか、そっか、
じゃ、今度こそーーーー
んんんんんーーーーー虫ィッ。
ウギャーーーー怖ぇぇよぉ~」

「虫?」

「そっ、特にあれな
黒いゴキーーー」

「わぁーかった。みなまで言うな。
確かに俺もアレはダメだわ。
いきなり飛んできたりするしな」

「だろぉ?良かったよ。
分かってくれるやつがいて。
ほんと、持つべきものは友と
この時期だとやっぱ塩キャンディだよなぁ。
熱中症対策でさ……」

「コウタ!わかった、わかった。
塩キャンディの話、今度聞くわ。
……ったく話すすまねぇじゃん……
よし。えーっと、後は誰だ?
おっ、リョウイチじゃん。
お前は?何かある?」

「俺?」

「そっ、お前。
お前さ、いっつもクールにすましててさ
そんなお前にも怖いものって
あるのかよ。」

「んーーーーーーー、あるよ。」

「あるの?」

「うん。ある。
でも、言わない。」

「何でだよぉ。
益々、気になるじゃん。」

「言いたくない。
マジで怖いから。
夜、寝れなくなる。」

「嘘だろぉ?
何時だって冷静沈着の
お前がぁ?
おい、言えよ。
みんな、順番に言ったじゃん。」

「んーーーーーー、
誰にも言わないか?」

「「「お、おう、言わない。」」」

「一度しか言わないぞ。」

「う、うん。っで、何?」

「…………マック、
おお、怖い怖い恐ろしやぁ……」

「「「マックゥ?」」」

「言うなよぉぉぉ。俺、マジでダメなんだって。」

と、震えながら耳を塞ぐリョウイチ。

「マックってハンバーガーの?」

「そっ、特にビックマックな。
うへぇ~、口にするのも怖ぇ~」

「いやいやいやいや、
マックだろ?ただのハンバーガーだろ?
旨いじゃん。何が怖いのよ?」

「怖ぇんだよ。
あんま、言いたくないんだけどさ……
ガキの時に見たんだよ。夢で。」

「夢で?何を?」

「ビックマックに追っかけ回される夢」

「「「はぁ?」」」

「いや、マジで怖いんだって。
でっかいビックマックにさ
手とか足とか生えててさ、
お前を食ってやる~~~
って追っかけてくるんだぜ。
怖いだろ?」

「「「確かに。」」」

「だろ?あぁ~ダメだわ。
何か思い出したら具合い悪くなってきた。
俺、先に帰るわ。」

「お、おう、お大事にな。
悪かったな。無理に聞いてーーー」











「おい、聞いたか?」

「「うん、聞いた。」」

「あの、いつだって偉そうに
すましてやがるリョウイチが
マック怖いだって?
ビックマックに追いかけられたって?」

ぎゃはっはっはっはっはっーーーー

お腹を捩らせて笑い転げる三人。
ケントは涙まで滲ませております。

「ああ、おもしれぇ。
聞いたこともねぇよな。
そうだ!俺、良いこと思い付いた。」

「「何だよ」」

「ちょっと、耳貸せ。」

ゴソゴソゴソゴソ……

「マジかよ~
めっちゃ、おもろそうじゃん。
やろうぜ。」

「よし、タケルは賛成だな。
コウタは?」

「やろう。
俺も冷静なリョウイチが慌てるとこ
見てみたい!」

「よし。決定。じゃあ
これから、ビックマックどっさり買って
リョウイチんとこ行こうぜ!」

「「おう!」」

早速、マックに行き、
ビックマックを大量に買ってきた三人は
リョウイチの家へと向かいました。

「こんちはーーー!
返事ねぇな。よし、鍵開いてるし
勝手に上がろうぜ。」

何度も来たことのあるリョウイチの家に勝手に上がり込み、リョウイチの部屋の前までくると
そぉーっとドアを開け、隙間から中を覗きます。するとーーーー

「おい、リョウイチ、布団敷いて寝てるぞ」

「さっきのでよっぽど
具合い、悪くなったんだな。」

「止めとく?」

「何、言ってんだよ。
いつも偉そうな事ばっかり言ってる
リョウイチのあわてふためいた姿見たくねぇのかよ」

「「見たい。」」

「よし。じゃ、いくぞ!
とりゃぁ~~」

そういって、リョウイチの部屋に
どんどん買ってきた大量のビックマックを
投げ込む三人。

するとーーー

「ウギャーーーー!
うわっ、何でこんなとこに
ビックマックあるんだよぉ~~
怖ぇぇ~。
ギャーーーーーー
助けてぇ~」

「クックックッ……
おい、聞いたか?
あのリョウイチが血相変えて助けてぇ
だってよ。笑っちゃうよな。
よし、どんどん、入れろ」

「うぉ~怖ぇモグ
また、きたぁ~モグモグ
どうなってんだよぉ~ングモグ
マジで勘弁してくれよぉ~~~ゴックン」

「なぁ?
何か、リョウイチの言葉おかしくね?
それに、あんまり怖がってるように、
聞こえねぇんだけど。」

「数が足りないんじゃないのか?
よし、残りも全部投げ込め!
それぇ~~」

丸めた背中をこちらに向け
何やらゴソゴソしているリョウイチめがけて
残りのビックマックを投げ入れる三人。

「うっひゃぁ~~。
また、ビックマックきたぁ~。
たまらん~~怖いよぉ~~
モグモグ、ングング……………………
ん!……ん、ん、んんんぅ…………」

「なぁ、なんか急に静かになったぞ。
気でも失ったか?」

ドアを開け中を覗いて見ますとーーー

「んん?
おいっ、あれ、見ろよ。
よく見りゃ全部、食ってるじゃん。
めちゃくちゃ、旨そうにして
口、一杯になってんぞ。」

「「マジで?」」

「くっそぉ~~
リョウイチめぇ、まんまと嵌めやがったな。
俺の今月の小遣いがぁ~~」

「おい、ケント
リョウイチが口、モグモグさせて
何か言ってんぞ?
はぁ?何だよ。リョウイチ?」










「うぅ~~く、く、くるじぃ~~
ビックマックがぁ……喉に詰まった……
みんな、すまない……
俺、本当はさビックマック平気なんだ。」

「はぁ?どういう事だよ?
他にあんのか怖いもの」

「……ある。
俺がホントに怖いのは…………
炭酸バリバリにきいたーーー
良く冷えたコーラ。
ああ~~怖くて怖くて……特にLサイズ……」




お後が宜しいようで……








※こちらは古典落語の『饅頭こわい』を
元に書いたものです。
落語好きである作者が以前よりチャレンジしたかったことでして、構想約半年。
消しては書き、消しては書き……
初めはギャル風の女子高生で
マカロンこわいにしようと思い
途中からやっぱり男子高生に変え
『エ◯本こわい』でラストは
ティッシュがこわい~~
いやいや、野いちごアカンやろ。
とまぁ、試行錯誤を、繰り返し
元も食べ物なので食べ盛り男子らしく
ビックマックにいたしました。
もっと元ネタの面白さを伝えられれば
良いのですが、今の私の力では
この程度です。落語好きの方には
特にスイマセン……
でも、少しでも興味を持っていただいた方は
是非、本物の饅頭こわい
聞いてほしいです。
ググって見てください。
絵本とかでもあったりするかなぁ。
いずれも、
もっと、おもろいです。
失礼いたしました!