「梶さん…は、咲絢には自分の事は話してないの?仕事の事は?」


え?自分の事って……。仕事って?


「だって、恭哉は幼馴染みで、昔から側にいたし……。仕事はバイトならしてるって聞きましたけど」

「……咲絢は彼の仕事については何も知らないわけね」

「若手なのに彼は凄いよな。まさか……」


倉木さんがそこまで言って、口を閉ざした。



「……私が知らないところで、恭哉はそんなに有名なんですか?」


恭哉はそんなの教えてくれなかった。


胸の中に、黒い闇がもやもやと広がっていく。


昂くんと、陽菜乃ちゃんがキスしてるところを見てしまったあの時みたいに。


恭哉は、ただの大学生じゃ、ないの?


私が知らない恭哉の顔があるの?


「……いずれ、全ては東京に戻ってからの話よ。咲絢は気持ちを切り替えて、クランクアップまで気を抜かないでね」



何でだろう?


頭ごなしに恭哉との仲を反対されると思ったのに、こんな反応じゃ、意味が分からないよ……。