「……これで契約は成立しました。以後のスケジュールを組み次第、この鳥羽に連絡させますので。あ、あと咲絢さんには仕事用の携帯を持ってもらいます」



契約書を封筒に入れながら、社長が鳥羽さんに目で合図する。


鳥羽さんは仕事用の鞄の中からパステルピンクのスマホを取り出し、あたしに渡してくれた。


「仕事に必要なアドレスやサイトはすでに登録してあります」




お父さんやお母さんには、中学生のうちはまだダメだって言われて、持っていなかった携帯電話。



少しだけ大人になった気がする。



「ありがとうございます!」


「来週末からはみんな併せて撮影が始まるからね。体調管理にはくれぐれも気をつけて。体が資本の仕事だから」


仕事。


あたし、中学生なのに『仕事』を始めるんだ。





両手に持ったスマホが、やけにずっしりと重く感じられた。





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