『…あ…』


しかし、その手は震えている。

震えた手で、刀をヒュンッと振った。

血が飛び散る。

その血は間違いなく、

庄吉の物だった。


『お前…』


庄助は、その女に近寄った。


『名乗れ』

『……』


女はまだ黙る。


『名乗れって言ってんだ!弟を斬った奴の名くらい知っておきたいんだよ!』


そう怒鳴ると、


『──茜さん!』


庄助の背後から誰かが近寄り、背中に鋭い痛みが走った。

ドサッと、庄助は床に倒れる。


『…木島茜』


その声を最後に、庄助は意識を手放した。

庄助を斬った男も同様に、浅葱色の羽織を着ていた。