「……逃げて下さい」

「え…」

「早く。貴女に、見せたくはありません」


そんな、と椿は躊躇う。

伊吹はただ者ではない事くらい、椿ももう気付いていた。


「私は間者ではない。別に、父上と母上の為なら、長州なんてどうでもいい。…“復讐”って、知ってる?私は、貴方達に恨みを晴らしに来た。それだけよ」

「椿さん、早く!」


まだ、椿は躊躇う。

沖田はもちろん、土方や近藤、他の隊士の事を考えると…動けなかった。

ついに椿は、決意する。


「…何を言ってるの。私だって、新選組の一員なんだから」


隠し持っていた脇差しを、ゆっくりと抜いた。

…今までにも、この刀で何人かの人が斬られたのだろうか。

ずっしりと、命の重みが感じられる。