天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

クオンの優しげな目尻を見ながら、ミカゲは何とはなしに言う。



「そういえば、クオンとはケンカしたことなかったわねぇ。

クオンって、子どもの頃から人間ができてたのね」



それを聞いてアスカは目を瞠った。



「うっそだぁ!! 本当に!?


クオン、俺とはよくケンカしてたじゃないか!!

菓子を取り合ったりとか」


「えぇ? そうなの? びっくり」



ミカゲが驚いたようにクオンの顔を見上げると、クオンは苦い顔をした。



「そりゃ、小さい頃はそんなこともあったかもなぁ」


「へえ、そうなの……。

私にはいつも自分の分のお菓子を全部くれてたわよね。

今更だけど、ありがとうございました」



ミカゲが改まって深々と頭を下げるのを見ながら、アスカは唇を尖らせた。



「ずるいなぁ。差別だよクオン!

……まぁ、クオンは昔からミカゲには甘かったもんね。しかもべったべたに」


「……そんなつもりはなかったんだけど」



クオンが珍しく、戸惑ったように視線を泳がせたので、ミカゲとアスカは喜んだ。



「あっ、クオンが照れてる!!」


「珍しいもん見たなぁ。

明日は槍でも降るかな? あはは」


「槍どころか、丸太が降ってくるかもしれないわね」



三人は懐かしい思い出話に浸りながら、衛兵の目を素知らぬ顔で掻い潜り、天宮の外へと翔び立った。