天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

「………ふー。

あぶなかったわね。


もう! やっぱりアスカが口を開くと碌なことがないわね」



猫被りを終えたミカゲは、アスカを軽く睨む。



「もう、今度やったら、そのかわいい上唇と下唇を縫いつけちゃうわよ」



そう言ってアスカをこつんと小突いた。



「ひー、こわ!!

そういえば昔、ミカゲとケンカしたとき、お気に入りのぬいぐるみの口に糊をつけられたことがあったなぁ」



アスカが蒼白な顔で逃げ腰になる。


それを聞いたクオンも、眉根を寄せてミカゲを見つめた。



「本当か?

恐ろしいことをするなぁ、ミカゲ。

私も重々気をつけよう。


兄弟そろって口に縫い糸がついていたら情けないことこの上ないもんな」



アスカとクオンは仲良く笑い合った。



クオンにまでからかわれ、ミカゲが睨みつける素振りをする。



「ま、そんなこと言って。

まるで私が暴君みたいじゃないの」


「いや、ミカゲは確かに暴君だった!」



アスカがすかさず言い返す。



「まぁ、失礼ね。

あのケンカは、もとはと言えばアスカが私のおもちゃに落書きしたのが発端じゃない」


「えー、そうだったっけ?」


「あらまぁ、都合の良くないことはちゃっかり忘れちゃって。

この弟、どう思う? クオン」



クオンは堪えきれないように笑い出し、「まぁまぁ」と二人を嗜めた。