天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

三人は動きやすい衣装を着て、羽衣を隠し持ち、天宮の廊を歩き出した。



羽衣とは、天の一族にとって重要なものである。


天国は、空に浮かぶ島々によって成っていた。


皇族や天貴人(あまつあてびと)が住まう天宮のある大きな天島(あまつしま)と、一般の天の民たちが住む小さな空島。


それらの間を移動する際には、天の羽衣と呼ばれる絹布を纏い、空を翔んで行かなくてはならない。



羽衣を使うのには危険も伴うため、皇族はあまり天島を出歩かないように言われている。




そういうわけで三人は、使用人たちに見咎められないよう、何食わぬ顔で出掛ける必要があるのだった。




歩いていると、大臣らを初めとする天貴人の一団が向こうから近づいて来た。



「これはこれは!

皇太子殿下、光宮さま、空宮さま!


ご兄弟お揃いで、いずこへ行かれるのですか?」



にこにこと笑顔を浮かべて、太政大臣が真っ先に近づいてきた。




太政大臣は、天国の政治体制の頂点にある地位である。


現在は、天貴人の中でも伝統のある名門フジハ家の首長、タカハが務めている。