天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether




*



朝餉の間を出てしばらくの所で、アスカは回廊の柱に隠れるようにしょんぼりと俯いて佇んでいた。



小走りの足音が聞こえた気がして、顔を上げる。


揺らめく篝火に照らされて、白く輝く姿が目に入った。



「ーーーミカゲ……」




歩を緩めてゆっくり近寄ってきたミカゲは、優しくアスカの背に手を当てる。



少し細められた瞳は、灯りを受けてきらきらと輝きを放つ睫毛に囲まれている。


ミカゲの赤い瞳の縁は、暗い所では少し灰色がかって見えた。



形のよい桜色の唇が、優しく笑みの形をとっている。




アスカは思わず、吸い込まれるように見つめた。




アスカを見上げたミカゲは、逆光で見えにくい表情を覗き込むように確かめる。


反省の色が読み取れたので、穏やかに語りかけた。



「どうしちゃったのよ、アスカ。

あんな風にクオンに歯向かうなんて……。


何か、あったの?」



アスカは少し顔を背けるようにして、下唇を噛み締めた。



ふわふわの癖毛が揺れて、その表情を覆い隠す。




「……クオンだって、あなたに皇室の者としての自覚を強制するのは嫌なのよ。


それは、私だって一緒。


でも、仕方ないって、分かるでしょ」



ミカゲの声は、柔らかく耳に馴染む。



それでもアスカは、何も答えられなかった。


俯いたまま、上着の裾を弄っている。









「………んもう!!


可愛いなぁ、アスカは!!


たまらないっ!!」




ミカゲは突然、ぎゅっとアスカの身体を抱き締めた。