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朝餉の間を出てしばらくの所で、アスカは回廊の柱に隠れるようにしょんぼりと俯いて佇んでいた。
小走りの足音が聞こえた気がして、顔を上げる。
揺らめく篝火に照らされて、白く輝く姿が目に入った。
「ーーーミカゲ……」
歩を緩めてゆっくり近寄ってきたミカゲは、優しくアスカの背に手を当てる。
少し細められた瞳は、灯りを受けてきらきらと輝きを放つ睫毛に囲まれている。
ミカゲの赤い瞳の縁は、暗い所では少し灰色がかって見えた。
形のよい桜色の唇が、優しく笑みの形をとっている。
アスカは思わず、吸い込まれるように見つめた。
アスカを見上げたミカゲは、逆光で見えにくい表情を覗き込むように確かめる。
反省の色が読み取れたので、穏やかに語りかけた。
「どうしちゃったのよ、アスカ。
あんな風にクオンに歯向かうなんて……。
何か、あったの?」
アスカは少し顔を背けるようにして、下唇を噛み締めた。
ふわふわの癖毛が揺れて、その表情を覆い隠す。
「……クオンだって、あなたに皇室の者としての自覚を強制するのは嫌なのよ。
それは、私だって一緒。
でも、仕方ないって、分かるでしょ」
ミカゲの声は、柔らかく耳に馴染む。
それでもアスカは、何も答えられなかった。
俯いたまま、上着の裾を弄っている。
「………んもう!!
可愛いなぁ、アスカは!!
たまらないっ!!」
ミカゲは突然、ぎゅっとアスカの身体を抱き締めた。



