天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

「そんなこと言ったってねぇ、クオン」



ミカゲは困ったようにクオンを見る。


クオンは溜息を吐いて、静かな声でアスカに語りかける。



「お前の気持ちは分からないでもないが……、そんな勝手なことも言ってられないだろう?


お前だって皇室の一員なんだ。

今日の参列者たちだって、第二皇子であるお前の成長した姿を、一目でも見たかったはずだぞ」



アスカは頭を垂れながら、上目遣いで兄を睨みつける。



「クオンは何も分かってない!

俺の気持ちなんて、これっぽっちも!!


……そもそも、なんで皇家の人間だからって、アホみたいにへらへら笑いながら天の民たちのご機嫌とらなきゃなんないんだよ。

俺たちだって、普通の天の一族……ただの人間なのに!」



唐突に激昂したようなアスカの言葉に、クオンは少し目を剥いた。



「……何を言ってるんだ、お前……。


民衆の支持があるからこそ、私達は皇家として存在することができるんだぞ?

そうでなければ、この世界どころか、天国ですら統べることはできないんだ」



アスカの頭に軽く手を乗せ、諭すように言うクオンだったが、アスカは乱暴にその手を振り払った。



いつもとは違う様子に、クオンもミカゲも驚きを隠せない。



「もういいよ!!

どうしようと俺の勝手だろ!!


俺はやりたいようにやるし、やりたくなけりゃやらない!!

その権利くらい、あってもいいだろ……」



クオンは勢いよく立ち上がり、朝餉の間を走り去った。



「アスカ!!」



ミカゲは、慌てたようにアスカを追い駆ける。



クオンは複雑な表情を浮かべて、二人の後姿を見送っていた。