天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether









「………クオン!


ミカゲ!!」




ミカゲとクオンが、朝餉の間でのんびり寛いでいるとき。


一人の少年が騒がしく飛び込んできた。




「二人とも、ここにいたの!?


ちょ、ちょっと、かくまって!

母上に追われてるんだよ!!」




天の一族にしては少し色の薄い、茶褐色の癖っ毛が、ふわふわと揺れている。



ぱっちりと大きな瞳も、黒よりは茶に近い色である。




つややかな頬にまだふっくらと幼さが残っている、愛嬌のある少年だ。





称号は空宮(そらのみや)、名はアスカである。



クオンの弟皇子だ。





ミカゲとクオンが三歳を迎えた頃に先皇が病に倒れ皇位を退いたため、鳴宮が即位した。



ちょうどその頃に生まれた、今上天皇の第二皇子である。




天皇の皇子でありながら、煩わしい責任や公務は皇太子である兄の時宮クオンに全て任せきりにして、自由奔放に育った。



多少わがままで周囲を困らせることも度々だが、クオンもミカゲも、この三つ歳下の無邪気な皇子が可愛くて仕方なく、蝶よ花よと甘やかしてしまっているのである。





今もアスカは、言いつけられていた今日の儀式に顔を出さなかったことで、母親である皇太后ユウハに叱られている最中なのだが……。



クオンもミカゲも目尻を下げて、アスカを背後に匿っている。