天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether









清涼の間に入る天皇を見送った後。



光宮は突然、何の迷いもなく長い衣装の裾をたくし上げると、つかつかと足早に歩き出した。


時宮も長い足をめいっぱい使って、その後を追う。



皇族が日常の食事をとったり、休息したりする際に使われる朝餉(あさがれい)の間に辿り着くと、光宮は長椅子に身を投げ出した。



「……はぁっ、疲れたぁ〜」



ほっそりとした両腕を思い切り上げて、大きく伸びをする。


「まったく、肩が凝っちゃうわ」



軽く頭を振ると、真っ直ぐ伸びた長い白銀の髪が、さらりと鳴った。

その美しい髪を簡単にまとめ髪にし、背凭れに身を預ける。



「ふぅ、偶像崇拝の彫像になりきるってのも大変よね、ほんと」




光宮の唐突な変貌にも時宮は全く驚くことなく、隣にゆるりと腰を下ろした。


足を組んで寛いだ姿勢をとると、光宮の肩を柔らかく摩る。


「おつかれ、ミカゲ」


公的な称号である《光宮》ではなく、その私的な名を呼ぶ。


「あなたこそね、クオン」


光宮も、肩を摩ってくれる手に手を重ね、時宮の名を呼んだ。