天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

長い廊も終わりに近づく。



天皇の普段の居室である清涼の間の前まで来ると、時宮が面を上げ、父皇に視線を投げかけた。



「……父上。


やはり空宮(そらのみや)は姿を現しませんでしたね」




その言葉に、天皇は落胆の息を吐く。



「…ああ、まぁ予想通りではあるが」



眉間に指を当て、軽く揉み解す。



「全く、あやつには本当に手を焼く……。

今日の祝祭だけは、何としてでも顔を見せるようにと、あれだけ言って聞かせておいたのに……」




そこで、光宮が顔を伏せたまま、くすりと笑い声を上げた。



「ふふ。叔父上さま。

あの空宮が、言って聞かせたくらいで素直に動くと思いまして?」



天皇は思わず唇を歪ませ、両眉を情けなく下げる。



「いや、まあ、確かに期待はしていなかったんだがな…。


しかし、あれも一応、皇子だからなぁ。

閉じ込めておいて、祭事が始まったら有無を言わさず民衆の前に引っ張り出す、というわけにもいかんだろう」



「ええ、そうですわね。

と言うより、無理に連れ出したりしたら、大切な儀式はめちゃくちゃにされてしまっていたでしょうね」




光宮は堪えきれないといった様子で、白い小さな歯を覗かせて笑った。