天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether








祭事を終えた後。


居所に戻る前に、天皇は時宮と光宮を引き連れて、天庭に集まり列を成す天の民たちの前をゆっくりと行幸した。




「陛下!!」


「時宮殿下!!」


「光宮さま!!」




人々は、腰ほどの高さの柵ごしに、目の前を悠然と巡行する三人に手をのばして、なんとか光栄を得ようとする。




その時、一人の少年が光宮の絹衣を掴んだ。


光宮は足を止め、少年を振り向く。



少年は、あまりにも高貴な光宮の相貌を直視することなどできず、肩を震わせながら俯いて言った。




「ひ、光宮さま…!

あの…お、お願いがあるんです……。


僕の弟が、病気なんです!!

どうか、どうか、お助けを…!!」



光宮は、ゆっくりと少年に歩み寄る。


そして、白くほっそりとした両の掌で、そっと少年の手を取り、包み込んだ。



「弟さんは、ここには来られなかったのですね?」



少年は何度も大きく頷く。


幼い瞳に涙が滲んでいた。



「……わたくしの目をしっかり見て。


わたくしの手の温かさを感じますか」



少年は恥じ入りながらも光宮の目を覗き込んだ。


伏せられた白い睫毛の奧の赤く澄んだ瞳の中に、吸い込まれそうになりながら。




光宮は静かな声で囁く。




「……どうですか?


……ほら、力が湧いてきたでしょう。

だんだんと、世界が浄らかに見えてきたでしょう……」