天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

力を入れてみたが、やはり腕は動かなかった。



なんとか指先だけを動かして、胸の中のものを指し示す。





「………お、ね……が、い……」





咽喉から捻り出した、小さな掠れた声。



聞き取ってくれただろうか。




救いの主がこちらに手を伸ばしてきて、血塗れの頬にそっと触れた。



そして、言う。




「………ああ、わかったよ……」




長い指が優しく頬を撫ぜた。






その柔らかな声。




その大きな掌の感触。