天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

ココ・リフォーは礼を言い、店主が指差した方向へ歩き出した。



(やはり、目立っているのだ。

やっと、見つけたーーー)




店主の言っていた食堂は、すぐに見つかった。


みすぼらしい掘っ建て小屋だが、客がたくさん入っているようで、少し離れた所でも賑やかな声が聞こえてくる。



(これだけ人がいれば、中に入っても大丈夫だろう)



小屋の入り口にかかった布を手で軽く払い、店内に入る。




すぐに、香ばしい海鮮料理の香りが鼻腔をくすぐった。



思った以上に客の入りが良く、ほぼ満席だ。


と言っても、小さい店なので全部で15人もいないだろう。



「いらっしゃーい!」



黒髪の小柄な子どもが、戸口に立つココ・リフォーに気付いて、すぐに声をかけてきた。



十二、三歳くらいだろうか。


いや、細くて小柄なので、幼く見えるだけかも知れない。


密度の濃い睫毛と、凛とした黒眼がちの大きな瞳が印象深い。


小造りな顔立ちが、よく整っている。


すらりと伸びた細い四肢も目を惹いた。



陽光を身体いっぱいに浴びて育ってきた植物のように、力が満ち溢れているのを感じる。