天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

ミチハは、天貴人の中でも冷酷非情で知られている。




目的を達するためには、情け容赦のない行動をとるのだ。





その彼が抱える兵団も、勿論そのように教育されているのだろう。





ミチハの兵団の頭らしき男が、馬の蹄の音に気づき、こちらに目を向けた。





「………これはこれは。


貴方様はもしや、ソガノ家の御曹司、タツノ様ではごさいませんか」





わざとらしい丁重な会釈を受け、タツノは右の口角を皮肉に上げた。





「あなたは確か、フジハ家の中納言殿の配下だったかな。


その顔の古傷、覚えてるよ。


………こんな地国くんだりで、一体何をしているのやら………」




「ははは! そのお言葉、そのままお返ししますよ。


天貴人界を代表する貴公子のあなだが、なぜ地国に?」





男はわざとらしく小脇に抱えていたものを軽く揺すった。




それは布に包まれていたが、その隙間から、さらりと黒髪が覗く。



細い腕と、赤い首飾りも垣間見えた。




(………捕まってしまったようだな。


やはり、出遅れたか………)





タツノは目立たないように眉を顰めた。