「すんませーん。


カルフィの港って、あとどれくらいですかー?」




たまたま擦れ違った旅団に、チキュは元気よく訊ねた。






明朗快活なチキュの声に、相手の旅人たちも朗らかに答える。




「そうだなあ。

まぁ、君たちの装備だと、あと一週間弱ってとこかな?」




チキュは「ありがとうございまーす」と手を振って、彼らを見送った。






三人は、カルフィ港を目指して、エレメデ海まで続く交易路リューロウを南下し続けていた。





チキュが謎の男に攫われかけてから、すでに数週間が経っていた。




しばらくの間は、ウチューもセカイも周囲への警戒を隠さなかった。



しかし、どうやら追われているわけではないらしいと分かり、多少安堵していた。




おそらく、すぐに宿を捨てて別の場所に移ったのが功を奏したのだろう。



男はチキュたちを見失ってしまったらしかった。