* 宿屋の窓を打つ雨は、さらに激しさを増していた。 朝靄も出てきて、外は日の出を感じさせないほどに薄暗い。 風が吹き荒び、街路樹を容赦無く弄ぶ。 窓際に腰掛けていたセカイは、物憂気に首を傾げた。 「………ウチュー、雨がすごいよ」 ゆっくりと振り返って、着替えをしているウチューに報告した。 ウチューも「あぁ」と相槌を打つ。 「困ったなぁ。 先を急ぎたいんだが………」 チキュはまだ呑気に惰眠を貪っている。