天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether








家臣が慌てて立ち去った後。


ムラノは苛々しながら忙しなく部屋を歩き回っていた。





そこに、がちゃりと扉が開いて、一人の青年が入室してきた。



「………お前か」



ムラノはちらりと振り向き、と呟く。




ムラノの長男、タツノである。





お世辞にも美男とは言い難い父親には、幸いにも似ず、洗練された美貌の青年である。



腰まで伸ばした長い黒髪を無造作に垂らしている。




物憂げに首を傾けながら、気怠い足取りでムラノに近付いた。





「父上。聞かせていただきましたよ」




背の低い父を見下ろすように、無表情に言う。





「………ふん、立ち聞きか。


相変わらず躾がなってないな、お前は」




苦々しい表情で言われ、タツノは片方の口角だけを上げる皮肉な笑みを作った。