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クオンは、約束の時刻ちょうどに謁見の間に入った。
そこには、手癖のように顎を弄るミチハが待っていた。
立派な顎髭と堂々たる体躯。
皇族一の長身と言われているクオンと並んでも、引け目をとらない。
「………おお、皇太子殿下。
わざわざ御足労を頂き、光栄の至りでございます」
恭しい態度で大仰に膝をつき拝礼する。
クオンも慇懃に返した。
「ミチハ殿、頭を上げてください。
我が祖母の弟君である貴方に跪かれるなど、こちらの気が引けてしまいます」
「何を仰いますやら、皇太子殿下」
ミチハは大袈裟な笑い声を上げた。
「創世神の御子孫であらせられる貴方様に比べれば、私めなど、ただの天の民でございます」
表面的な動作と言葉だけは謙っているが、態度は非常に悠然としている。



