天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

ミチハは昔から、長兄タカハの愚かさには辟易していた。



いつも穏やかで人望が厚いと称賛する者も多いが、裏を返せば鈍感で馬鹿正直ということだ。


今現在の権勢も、いつ転覆を図られるか分かったものではない。



おそらく、いざ謀反を起こされても、どう対応していいかも分からずおろおろして、気がついたら権力の座を転がり落ちていることだろう。



フジハの頂点が、そんなことでは大いに困る。


フジハ一門すべての命運を握っているというのに。



だからこそ、いつかは自分が成り代わってやると、ミチハは心に深く誓っていた。


そのための布石も、しっかり打ってある。



それが、ここ最近、仇敵ソガノ家のムラノの動きが怪しい。



あらゆる人脈を駆使して入手した情報を綜合すると、どうも皇太子との姻戚関係を狙っているらしいのだ。



(……あそこは娘が二人いるからな。

どちらかを時宮の側室にでもしようと企んでいるに違いない)


そうミチハは睨んでいる。




それで今日は、意を決して皇太子殿下への直接謁見を請願したのだ。