天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

しかし、カネハの末子のミチハにとっては、それは不愉快な状況である。



(……ふん、面白くもない)



長い顎髭を生やしたミチハは、それを摩りながら鼻を鳴らす。



長兄タカハに父の七光りを全て奪われた形で、ミチハは現在、中納言の地位に収まっている。


甥子であるコレハにもイエハにも後れをとっている状態だ。



ミチハの息子・ヨリハも、なかなか出来の良い後継なのだが、まだ少納言止まりだ。



生まれながらにして、父譲りのかなり旺盛な権力欲を持っていたミチハは、この情勢を一刻も早く打破せねばと、焦燥に駆られる。




(……そもそも、あの馬鹿兄貴には政治の才能がない)


長兄タカハの、いかにもお人好しの丸顔を思い描きながら、ミチハは舌打ちする。



(その血をしっかり継いで、コレハもイエハも阿呆みたいにのんびりしている。


生まれた時から馬鹿兄貴の庇護のもとでぬくぬく育って、何の苦労もせずに昇進し、全く覇気ってものがない)



このままではいつか、虎視眈々と時機を窺っている敵家に、してやられるはずだ。


そんなことでは、このフジハ家の栄華も終焉は近いだろうと思う。