天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

「なーにじゃねぇよ!

もー、ほんっとに究極的マイペースだな、お前は!!」



軽く頭を小突かれるが、セカイはぼんやりとされるがままになっている。




「で? お前なに見てたの?」



そう訊ねられ、セカイは顎に手を当てて少し考え込む。



「……うーんと。


木漏れ日がきれいだなぁと思って。

木の葉を見てた」



セカイの答えに、チキュは眉をへの字に曲げた。




「はぁあ?

お前、葉っぱなんか見て、何がおもしれぇんだよ。

わっけわかんねぇな」



「うーん………」




セカイはしばらく考え込む。




「………あのね。


陽が当たると、光に透けて、明るい緑色になって、すごくきらきらして、きれい」




セカイは、頭上の梢を指差した。



チキュも仰ぎ見るが、しばらく揺れる葉々を凝視したあと「ふぅん?」と首を捻り、関心を失ったように虫籠に視線を移した。




「そんなのより、蝶々のほうがずっときれいだ!」



「うん。きれいだね、揚羽蝶」




セカイは紫の瞳を柔らかく細め、薄い唇を微笑ませる。



そして、得意気に語るチキュの頭をなでなでと撫ぜた。