天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

トーキ爺は、普段は売り手として、決まった場所に居座って商売をしている。


だが今日は、朝市全体の様子を見たいであろうチキュとセカイのため、買い手の舟に混じって混雑の中を器用に舟を動かしていった。




「あっ、うまそう!」


チキュは、果物を山盛りに積み上げた舟を見つけ、大きな声を上げる。



それを聞いた主がにかっと笑って話しかける。




「お目が高い!


今年はじめての春果物ですからね。

瑞々しくて美味しいですよ!


試しにおひとついかがですか」




真っ赤な果実を一つもらい、嬉しそうに頬張る。




「うんっ、ジューシー!! 甘い!


な、ウチュー、じゃないギンガ!

人数分買って行こう、昼飯の食後のデザートに最高だよ!」




きらきらした瞳に見つめられ、ウチューは「仕方ないなぁ」と財布を取り出した。




「おい、チキュ。

今日はトーキ爺の手伝いに来たんだろ?


買うのじゃなくて売るのが仕事だぞ」



「へーい、わかってるよ。

これで終わりにするからさ!」




小言を言われてしゅんとしてしまったチキュを見て、トーキ爺は笑う。




「まぁまぁ、いいじゃねぇかウチュー。

今日は商売は置いといて、留守番のタキに美味いもん買ってってやろうか」



「えっ、ほんと? おじいちゃん!

じゃ、あたしも欲しいものあったらお願いしちゃおっかな〜」



「よし、今日は特別だぞ!」




祖父と孫娘の微笑ましい様子に、ウチューの口元も綻んだ。