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心地よい春の朝。
路傍の樹々の新緑が明るい陽の光に照らされ、透明感のある眩しい黄緑色に染められながら風にそよいでいる。
「ウチュー、セカイ、遅いぞ!!
情けねぇなぁ、さっさと行くぞ!!」
宿を出て歩き出して、すぐ。
すたすたと歩を進めていたチキュは、待ち切れないといった様子で、自分の十歩も後ろをのんびり歩いている二人を振り返り、大きく手招きした。
宿に着いた途端ベッドに入り、思い切り寝坊までしたチキュは、もちろん元気いっぱいだ。
夜が明けきるまで果実酒を飲みながら語り合い、熟睡できないままに目覚めて旅支度を整えた二人は、寝不足の眼で眩しそうにチキュを眺めた。
「なぁんだよ、二人とも。
寝惚けた猿みたいに間抜けた顔しやがって」
チキュは訝し気な表情で、二人の顔を交互に見る。
「旅の最中だってのに、ちゃんと寝なかったのか?
緊張感がないぞ、諸君!!
オレ様を見習え!!」
一番緊張感も緊迫感もないのは勿論チキュなのだが、そんなことはお構いなしである。
「チキュがアホみたいに爆睡してる間、俺たちは人生というものについて深遠なる議論をしてたんだよ!」
ウチューがチキュの頬を軽く引っ張る。



