天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

「おいしいね」


意外と酒に強いセカイが、少し目を細めて言った。



ちなみに、今は夢の中にいるチキュは、一気にごくごく飲む割には直ぐに酔っ払ってしまう。


活動量が多いぶん他人より血の巡りが良く、アルコールが全身に廻るのが早いのだろう、というのがウチューとチキュの一致した見解だ。




「ああ、うまいだろ?

ククアの《森の民》から直接譲り受けたものだからな」


ウチューは嬉しそうに言う。



しばらくすると、急に改まった口調でセカイに言った。




「で? セカイ。

何か俺に言いたいことがあるんだろ?」


「……え?」



セカイは、普段は重た気に下りている瞼を少し上げて、ウチューを見た。




「わかるよ。

十五年間一緒に暮らしてるんだからな。


何か、言いたいことがあるからなんだろ?

チキュが寝たのに、今、お前が寝ないで起きてるのは」



ウチューは口角を上げてセカイをじっと見た。



セカイはまた一口果実酒を飲み、しばらくグラスの縁を見つめていたが、徐ろに口を開く。




「……小屋を出る前。

ウチューが買い物に行ってる間に、チキュと話したんだ。


……今度の旅立ちは、まるで、何かから逃げてるみたいだって……」



ウチューの表情の変化を見逃すまいと、セカイは真っ直ぐに向き合った。