数時間後。


夜の帳が降り、人々がそれぞれの家に帰り着いた頃。



三人は、人目を避けるように、薄明るい闇に紛れてルルティアの地を去った。






ーーー春の夜の、生温い風が吹く。




チキュの艶めく黒髪が。

セカイの細く柔らかな髪が。

ウチューの頭に巻かれたターバンの端が。



ふわりと、宙に舞い上がる。





チキュが、肩からずり落ちた荷物を、重そうに持ち直した。


「持とうか?」


ウチューが問いかけると、チキュは首を振る。


「だーいじょぶ。さっ、早く行こう!!」




そこに、一匹の揚羽蝶が、風に乗って舞い降りてきた。



「あっ! 見ろよセカイ!!


夕陽みたいな黄色の揚羽!!


昨日、オレが捕まえたやつかも知れないなぁ」




チキュが嬉しそうな顔で指差す。


セカイもそれを目で追いながら、微かに笑った。



「ふふ、それはどうかなぁ?


そうだと、いいけどね……」








ーーー次の土地を求めて、三人は歩き続ける。



それぞれの想いを、胸に抱きながら。