天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether









「……はぁっ!?


なっ、なんでだよ!」



チキュが大きな目をさらに大きく見開いて、大声を上げる。



「そんな事いきなり言われたって、はいそーですかってなると思うか!?」



チキュがこのように大騒ぎするのには、理由がある。




チキュとセカイが遊びから家に戻ると、ウチューが突然、今晩この町を出ると言い出したのだ。



その唐突な宣言を受けて、チキュは天地がひっくり返りそうなほど驚いた。




革製の大きな鞄に次々と手近な物を詰めていくウチューの隣で、チキュは勿論、非難囂々だ。



分かってはいたけど、とウチューは面倒そうな顔をしている。


しかし、荷造りをする手は止めない。



「おいっ、ウチュー!!


なに無視してんだよっ!!

感じ悪いぞっ!!!」



チキュが両手を振り回しながらぎゃあきゃあ騒いでいるが、その後ろにぼうっと立っていたセカイが口を挟んだ。



「………チキュ。


いきなりなのは、いつもの事じゃない。

今更そんなに騒いだって、仕方ないよ」



チキュは最大級の不機嫌顔を作って、セカイを睨みつける。



「………だってさぁ。


昨日カエナが店に来てくれてさ、親父さんがまた飲みに来るって言ってくれたんだよ。

そしたら上手い酒用意しとくって、約束までしたんだぞ?


おばさんだって、今度はパイを焼いてくれるって……」



だんだんと涙声のようになってくる。


セカイは黙って聞いていた。



「……それなのにさぁ。

約束も果たさないうちに引っ越すなんてさぁ。

親父さんにもおばさんにも申し訳ないよ………」