天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether









「ん〜〜?

何か言い合ってるように見えるけど、何かしら……」



ミカゲが首を傾げる。



ミカゲとアスカは、羽衣で身体を浮かしながら空島の突端の下に隠れ、肩を並べてその様子を見ていた。




「あれって、確かムラノ参議だよね?

スガノ家の首長の」



アスカもその隣で首を傾げた。



「そうよ。

先皇の皇太后の弟君だから、私たちにとっては、いちおう父方の祖母弟ということになるわよね」




先皇の皇太后はソガノ家の出身で、ミカゲの父である亡き正宮と、クオンとアスカの父である鳴宮を産んだのである。



「あんまり接点がなかったからなぁ、よく知らないけど。

クオンと何の話だろう………?」




二人が首を傾げながら見ていると。

クオンが突然大声を上げるのが、風に乗って聞こえてきた。




「………え??

なに、なに?


もしかして、クオンが怒ってる??」



「……そんな風に聞こえたね。


どうしたんだろ、臣下に怒るなんて…」





十数年間も共に暮らしてきた三人であったが、クオンが声を荒げるのなど、見たこともなかった。



二人は驚きを隠せない。



「あのクオンを怒らせるなんて………。

一体ムラノの奴、何を言ったんだ?」





訝し気に言うアスカの隣で、胸の内を靄のように漂い出す不安をミカゲは感じていた。



(何か、良くないことが、起ころうとしてる気がする………)




ミカゲは息苦しくなるような胸騒ぎを感じていた。



しかし、創世神の化身として崇められ尊ばれているミカゲだが、本人は全く普通の天の一族である。



何ら特別な力など持たないミカゲは、クオンとムラノ参議がどんな話をしているのかは勿論、自分に関わる深刻な口論をしているとは、想像さえできない。