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「ん〜〜?
何か言い合ってるように見えるけど、何かしら……」
ミカゲが首を傾げる。
ミカゲとアスカは、羽衣で身体を浮かしながら空島の突端の下に隠れ、肩を並べてその様子を見ていた。
「あれって、確かムラノ参議だよね?
スガノ家の首長の」
アスカもその隣で首を傾げた。
「そうよ。
先皇の皇太后の弟君だから、私たちにとっては、いちおう父方の祖母弟ということになるわよね」
先皇の皇太后はソガノ家の出身で、ミカゲの父である亡き正宮と、クオンとアスカの父である鳴宮を産んだのである。
「あんまり接点がなかったからなぁ、よく知らないけど。
クオンと何の話だろう………?」
二人が首を傾げながら見ていると。
クオンが突然大声を上げるのが、風に乗って聞こえてきた。
「………え??
なに、なに?
もしかして、クオンが怒ってる??」
「……そんな風に聞こえたね。
どうしたんだろ、臣下に怒るなんて…」
十数年間も共に暮らしてきた三人であったが、クオンが声を荒げるのなど、見たこともなかった。
二人は驚きを隠せない。
「あのクオンを怒らせるなんて………。
一体ムラノの奴、何を言ったんだ?」
訝し気に言うアスカの隣で、胸の内を靄のように漂い出す不安をミカゲは感じていた。
(何か、良くないことが、起ころうとしてる気がする………)
ミカゲは息苦しくなるような胸騒ぎを感じていた。
しかし、創世神の化身として崇められ尊ばれているミカゲだが、本人は全く普通の天の一族である。
何ら特別な力など持たないミカゲは、クオンとムラノ参議がどんな話をしているのかは勿論、自分に関わる深刻な口論をしているとは、想像さえできない。



