天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

「わざわざ教えて頂かなくとも、そんなことは承知しています」



クオンは不機嫌さを堪えきれず、口を出した。


するとムラノは、口角を上げてにやりと笑みを浮かべた。



「それでは、前置きはもうこれ以上、必要ございませんね」



「………いったい、何の前置きだったのですか」



低い声で訊ねるクオンに、ムラノはじりじりと近寄った。




「ーーー殿下。


失礼を承知で、申し上げます」



「……なんですか」



クオンは微かに唾を呑み込み、背筋を伸ばした。



威圧するようにムラノを見下ろす。




「殿下がこの度正室としてお迎えする光宮さまは……」





卑俗な男の口からミカゲの名が出たことに、クオンは苛立ちを抑えられない。



しかし、不満を堪えて、黙って続きを待った。






「光宮さまは、皇太子の妃としての使命は果たせないものと存じます」