「皇太子殿下。
御無沙汰いたしておりました」
壮年の男が、音もなく空島の端に降り立った。
「このような場所で偶然お見かけすることができ、嬉しさのあまり、無作法を承知の上で、思わず降りて参ってしまいました」
「………ムラノ殿でしたか」
クオンの前に立ったのは、参議のムラノである。
天貴人の名門フジハ家と同じく、代々皇室と姻戚関係を結び続けてきた由緒正しいソガノ家の首長だ。
「実は、このところ殿下と静かにお話できる機会を窺っていたのですが……。
お忙しい殿下のことですから、なかなか二人きりではお会いできず、やきもきしておりました」
ムラノ参議は媚び諂うように笑顔を浮かべているが、その目が笑っていないのは明らかだ。
クオンは少し眉根を寄せながら、無表情で対応した。
「……そうでしたか。
なにか急用でもございましたか」
「ははは!
何をそう警戒しておられるのですか、殿下。
……ああ、そういえば、御婚約おめでとうございます。
いやはや、ソガノには何一つ知らされておりませんでしたので、多少驚きましたが」
馴れ馴れしく近寄ってくるムラノ参議に、不快の心情を隠さずに後退る。
そのクオンの態度も意に介さず、ムラノ参議は目の前で足を止めた。
「ところで、そのような時機に何とも無礼かとは存じますが……。
実はひとつ、お願いしたいことがございますのです」
「………?」
御無沙汰いたしておりました」
壮年の男が、音もなく空島の端に降り立った。
「このような場所で偶然お見かけすることができ、嬉しさのあまり、無作法を承知の上で、思わず降りて参ってしまいました」
「………ムラノ殿でしたか」
クオンの前に立ったのは、参議のムラノである。
天貴人の名門フジハ家と同じく、代々皇室と姻戚関係を結び続けてきた由緒正しいソガノ家の首長だ。
「実は、このところ殿下と静かにお話できる機会を窺っていたのですが……。
お忙しい殿下のことですから、なかなか二人きりではお会いできず、やきもきしておりました」
ムラノ参議は媚び諂うように笑顔を浮かべているが、その目が笑っていないのは明らかだ。
クオンは少し眉根を寄せながら、無表情で対応した。
「……そうでしたか。
なにか急用でもございましたか」
「ははは!
何をそう警戒しておられるのですか、殿下。
……ああ、そういえば、御婚約おめでとうございます。
いやはや、ソガノには何一つ知らされておりませんでしたので、多少驚きましたが」
馴れ馴れしく近寄ってくるムラノ参議に、不快の心情を隠さずに後退る。
そのクオンの態度も意に介さず、ムラノ参議は目の前で足を止めた。
「ところで、そのような時機に何とも無礼かとは存じますが……。
実はひとつ、お願いしたいことがございますのです」
「………?」



