天と地の叙事詩Ⅰ Epic of the Ether

そんな二人の様子にも気付かず、ミカゲは自分の荷物を漁りはじめた。


「さ、とりあえずお弁当にしましょ」



ミカゲが広げた小箱には、まろやかに白く風に揺れる霞が入っていた。


天の一族は、羽衣をまとって空を翔ぶ能力を失わないため、身体が重くならないように霞を食べて生きている。


この霞から、活力となる栄養源も、水分をも摂取している。




天国には流れる水が存在しないからだ。


時おり降ってくる雨を溜めて、煮沸消毒して飲料とすることは可能だが、天の一族全員分を確保するのは到底困難である。



大量の水が欲しければ、地国の商人から買い取るしかなかった。



そのため、霞が水分源となっている。





一部の空島の周りで採れる上質の霞が、天貴人や皇族の主食だ。



これらは、一般の天の民や下級の天貴人では手に入れるのも困難な、最高級のものである。



天の民たちは自分が住む空島の周囲にある霞を日々採集し、その地区を支配している天貴人に全て献上する。


それらの霞は、天貴人たちによって天宮に集められ、品質で分類された後に、また均等に全ての天の民たちに分配されるのだ。



献上された霞の中でも最高品質のものが、皇族の食卓に上がることになる。




今日ミカゲが持参した霞は、フジハ家の広大な領域の一部で採れる、触感も薫りも良く栄養価も高い、最高中の最高級のものである。