「……――里桜……。ねぇ、里桜……」
すると、今までの会話を隣の席で全て聞いていたであろう樹里が小声であたしに声をかけてきた。
「なに?」
小声で返事をし返すと、美奈子は机の上のルーズリーフに何やら文字を書き始めた。
それをちぎって小さくたたむと、先生に気付かれないようにあたしの机の上に投げる。
その紙切れはあたしの机の上にポトリと落ちた。
不思議に思いながらその紙切れを開くと、そこにはこう書いてあった。
【宇宙君が誰か分かったかもしれない】
え……?本当に……?
驚いて樹里の方を見ると、樹里は黙って頷いた。
あたしは慌てててルーズリーフの後ろにこう書いた。
【そういえばね。美奈子が言ってたの。一昨日、宇宙君と樹里が駅前で一緒にいたって】
樹里の机に投げ返すと、樹里はすぐに紙切れを広げた。
そして、再びあたしの方に視線を移すと、確信を持ったように大きく頷いた。
とうとう宇宙君が誰なのか分かるんだ……。
意外な展開に、胸が高鳴る。
頭の中が宇宙君でいっぱいになり、授業の内容なんてこれっぽっちも頭に入りはしなかった。