「……で!? そのあとチューしたわけね、2人は」
深夜0時を回り、花火大会の出来事も“過去”の話になってしまった。
早く自分の部屋に戻って余韻に浸りたいのに、どうも“恋愛の神様”は空気が読めないらしい。
「するわけないでしょ!」
「え~、してないの? つまんない。結局、お手てつないで“はい、さようなら”? ほんっとにさぁ、子供じゃないん……」
「ふふふ。母上、娘をみくびってますな」
きっとママのなかでは、あたしは消極的な娘のままなのだろう。
だけど、それは大きな勘違い。
あたしだって勇気を出したんだよ。
「なにっ!? 何が起きたの!?」
「……娘はですね、裕貴先輩とメアド交換したのですよ、母上」
「………っ!!」
驚きのあまり口をあんぐりと開けて、両頬を手で押さえるママ。
まるでその姿は、ムンクの叫びそのものだ。
……ウケでも狙っているのだろうか。突っ込んでほしいのだろうか。


